
移動平均線の使い方と見方|向き・角度・位置関係・乖離と期間の選び方
移動平均線ほど、知識と実戦のあいだに差がある指標はありません。知らない人はいないのに、使いこなせている人はほとんどいない。
短い期間の線が長い期間の線を下から上に抜けたら、買い。ローソク足が線まで下がってきたら、押し目買い。3本の線がきれいに並んだら、トレンドに乗る。どれも入門書の最初のほうに載っている使い方です。ところが、約10年分のチャートで確かめると、その後に上がるか下がるかは、どれもほぼ半々でした。
移動平均線は、使える相場と無意味な相場が、はっきり分かれる指標です。無意味な相場で入るから、ダマシ(合図の向きに進まず、すぐ逆に動くこと)が続き、少しずつ資金が減っていく。使える相場だけを見分けて、そこで入る。移動平均線で結果を出すには、これしかありません。
- 移動平均線が使える相場と、無意味な相場の見分け方
- 見るのは線の向き・角度・位置関係と、ローソク足との乖離の4つだけ
- 期間は「何を知りたいか」で選ぶ。いちばん良い1本はない
移動平均線の使い方
移動平均線が教えてくれるのは、次にどちらへ動くかではありません。今の相場の状態です。トレンドが出ているのか、止まっているのか。どのくらいの勢いがあるのか。値段が平均から行き過ぎていないか。
私は、移動平均線をそのままエントリーの合図に使うことはおすすめしません。今の相場が、移動平均線の使える相場かどうか。それを見分ける道具としてなら、今でも十分に使えます。
移動平均線が使える相場と無意味な相場
移動平均線が使えるのは、トレンドの中で、ローソク足が線から離れたり、線まで戻ったりを繰り返している相場です。強いトレンドでは、ローソク足が移動平均線に支えられるようにして上がっていきます。押し目(上昇トレンドの途中で、値段がいったん下がった所)をつけるたびに、線がそこを押し戻して、トレンドを終わらせない。
反対に、ローソク足が線に張り付いている時間が長い相場は、ただのレンジです。線をはさんで上に抜け、下に抜けと、行ったり来たりしている相場も同じです。こういう相場で、線どうしが交わった所や線にタッチした所を根拠に入ると、ダマシが続きます。普段は良いトレードができていても、ダマシの連続で、結果はじり貧になります。
移動平均線で見るのは向き・角度・位置関係・乖離
移動平均線を使い慣れた人が、無意識のうちに必ず見ているのは、線の向き・角度・位置関係と、ローソク足が線からどれだけ離れているか(乖離)の4つです。
| 見るところ | わかること |
|---|---|
| 向き | 上か下か水平か。トレンドかレンジか、トレンドならどちら向きか |
| 角度 | 線がどれだけ急に傾いているか。トレンドの勢い |
| 位置関係 | ローソク足と線、線どうしが上からどの順に並んでいるか。トレンドか、転換しかけか、もみ合いか |
| 乖離 | ローソク足が線からどれだけ離れているか。値段の行き過ぎ |
4つのどれを読むときも、その線が何本分の線かが決まっていないと読めません。期間10の線は直近10本の、期間50の線は直近50本の終値の平均です。期間は、4つを読む前の前提です。チャートに線を入れたら、まず「この線は何本分か」を頭に入れてください。
そして4つは、1つだけ見ると読み違えます。ローソク足が線から大きく上に離れていても、トレンドの中なら値動きが強い証拠で、レンジの中なら平均の方へ戻される力が大きく働く場面です。短期の線が上を向いていても、長期の線が下を向いていれば、その上昇は下降トレンドの中の一時的な戻りかもしれません。4つを組み合わせて、今の相場の状態を読みます。
1秒チャート分析法
私は、ローソク足を右端の1本だけ、移動平均線も右端の少しだけ見れば、それまでの値動きをざっくり頭の中に描けます。チャートを1秒眺めるだけで、それまでの値動きが分かる。それで私は、この読み方に「1秒チャート分析法」と名前を付けました。
読むのは、線の期間、ローソク足との距離、線の向きと傾きの3つです。
- 期間:その線が何本分のローソク足を平均した線か。期間10の線なら、直近10本の値動きの話をしています
- ローソク足との距離:線から上に大きく離れていれば、直近で強い買いがあった。下に大きく離れていれば、強い売りがあった。線の近くにいれば、今の値段はその期間の平均に近い
- 向きと傾き:線がどちらへ、どれだけ傾いているか。急に傾いているほど、平均の値段が大きく動いた証拠。水平に近ければ、平均はほとんど動いていない
たとえば、期間10の線が急な角度で上を向き、ローソク足が線から大きく上に離れている。期間50の線は水平に近く、ローソク足のすぐ下にある。2本を合わせると、直近10本は大きく上がり、50本で見ればほぼレンジ、と読めます。練習を重ねると、右端の1本と線の端だけで、チャート全体が1秒で頭に浮かぶようになります。スキャルピング(ローソク足数本の値動きを狙う短い取引)のように、とっさに判断する場面で特に役に立ちます。
ゴールデンクロスや押し目買いで勝てない理由
ドル円・ユーロドル・ポンドドル・豪ドル米ドル・ゴールドの5銘柄、約10年分のチャートで、入門書に載っている3つの使い方を確かめました。ゴールデンクロスで買う。上を向いた線まで下りてきて触れたら、押し目買い。3本の線がそろったパーフェクトオーダーで乗る。
どれも、その後に上がるか下がるかは、ほぼ半々でした。1分足でも4時間足でも、期間の組み合わせを変えても、結果は変わりません。線が交わった、線に触れた、3本が並んだ。どれも、次にどちらへ動くかは教えてくれません。移動平均線は過去の値段を平均した線で、それまでの値動きの結果を描いているからです。
勝っている所だけが目に入る
説明の図や過去のチャートでは勝てているのに、自分で使うと勝てない。原因は、都合よく勝っている所だけが目に入り、負けている所が目に入っていないことにあります。
大きなトレンドの手前には、たいていゴールデンクロスが出ていて、途中ではパーフェクトオーダーもそろっています。そこだけを切り抜いて「ほら、勝てるでしょう」と見せる人がいます。ところが同じ手法で1年分を通して売買すると、成績はかなり悲惨なことがほとんどです。大きなトレンドの前後には、たいていもみ合いがあり、2本の線が何度も絡んで、クロスが続けて出ます。チャートを眺めていると、目は大きく伸びた所に吸い寄せられ、もみ合いの中の小さな負けは素通りします。
私自身、相場を始めた頃は移動平均線の順張りを極めようとして、勝てませんでした。MT4のプログラミングを覚えて、移動平均線を片っ端から検証しても、移動平均線だけで勝てるやり方は見つかりませんでした。
手法を確かめるときは、過去のチャートで、条件がそろった所に1つ残らず印を付けてください。勝った所も負けた所も、全部です。印を付けると、勝っている所も負けている所も、同じように目に入るようになります。
移動平均線の向き
移動平均線の向きは、その期間の平均の値段が上がっているか、下がっているかです。線が上を向いていれば、その期間の相場は上昇。下を向いていれば、下降。水平なら、平均の値段はほぼ同じ所にとどまっていて、上にも下にも進まない、レンジに近い相場です。
向きは、今どちらを向いているかだけでなく、同じ向きがどれだけ長く続いているか、どれだけ頻繁に切り替わっているかでも読めます。上向きがずっと続いている所は、強い上昇トレンドの最中です。上向き・水平・下向きが短い間隔で入れ替わっている所は、それまで出ていたトレンドが止まり、停滞しています。
向きで勢いを読むなら、期間の長い線で見てください。期間20以下の線は値動きに敏感なぶん、トレンドの最中でも向きが頻繁に入れ替わり、トレンドなのか停滞なのかの区別がつきません。
長期の線と短期の線の向き
短期の線(期間の短い線)が上を向いていても、それが上昇トレンドの真っ最中なのか、下降トレンドの中で一時的に戻しているだけなのかは、長期の線(期間の長い線)を見るまで分かりません。
- 長期の線が上向き・短期の線も上向き:上昇トレンドの真っ最中
- 長期の線が上向き・短期の線が下向き:上昇トレンドの中の押し目の最中か、上昇そのものが終わりかけている
- 長期の線が下向き・短期の線だけ上向き:下降の中の短い戻り
時間足を変えても、同じことが起きます。15分足では強い上昇トレンドに見えたのに、上位足(今見ている時間足より長い時間足)を開くと下降トレンドの途中だった。順張りで入って負けるときに、よく起きていることです。上位足は、ふだん見ている時間足より1つか2つ長い時間足を開きます。5分足で売買するなら15分足と1時間足、15分足で売買するなら1時間足と4時間足です。
長期の線の向きが、狙う向きを決めます。長期の線が上を向いているなら、短期の下げは押し目買いの候補です。下を向いているなら、短期の上げは戻り売り(下降トレンドの中で、一時的に上がった所で売ること)の候補で、買いの根拠にはしません。
長期の線が水平なときの順張り
順張りの手法を使っていて、長期の線(たとえば期間200のEMA)に傾きがなく、水平に近いなら、ポジションは早めに手じまってください。長期の線に傾きがないのは、大きな流れとして停滞が続き、方向がない状態です。こういう相場でトレンドの手法を使うと、ダマシに遭いやすくなります。
線が水平な間は、ローソク足が線の上と下を行ったり来たりし、線は支えにも抵抗にもなりません。短期の線と長期の線が何度も絡み合い、ゴールデンクロスやデッドクロスが続けて出ます。順張りで入るのは、長期の線に傾きがある間だけにします。
移動平均線の角度
向きが教えてくれるのは、トレンドがどちらに出ているかです。角度が教えてくれるのは、そのトレンドの勢いです。同じ上向きでも、ほとんど寝ている線と、ぐっと立ち上がっている線があります。
角度は、何本で、どれだけ動いたかで見ます。10本前と比べて30pips上がった線と、同じ10本で5pipsしか上がっていない線。向きはどちらも上ですが、上がる勢いはまったく違います。
期間の違う線の角度を比べる
線が急に傾くのは、トレンドがはっきり出ているときと、経済指標の発表や要人発言で値段が一気に動いたときです。どちらなのかは、期間の違う線を並べると分かります。
期間の短い線だけが急に立ち上がり、期間の長い線は寝たままなら、長い目で見ればもみ合いの中で、直近の何本かだけが大きく動いた所です。
期間の長い線まで同じ向きに傾いていれば、短い間だけでなく長い間で見ても、方向が出ています。
角度は、今の大きさだけでなく、変わっていく様子も見ます。急だった線が、だんだん寝てくる。トレンドの勢いが落ちてきた印で、トレンドの終わりが近づいていることに早めに気づけます。
移動平均線の角度は数字で決める
「線に勢いがついてきた」「傾きがゆるくなってきた」。角度を見ている人も、多くは目で見て、なんとなく判断しています。感覚のままでは、同じ場面を見ても日によって判断が変わり、手法に再現性が生まれません。
決めておくのは、何本前の線と比べるか、どこから上を急と見るか、どこから下を水平と見るかです。期間の短い線は、同じ相場でも期間の長い線より急に傾くので、境目は使う線ごとに決めます。決めたら、変えずに使い続けてください。
関連記事移動平均線の角度がわかる無料MT4インジケーター|SMAとEMA
移動平均線の位置関係
位置関係で最初に見るのは、ローソク足が移動平均線の上にいるか、下にいるかです。ローソク足が線より上にいるなら、今の値段はその期間の平均より高く、直近で買いが強かった。線より下なら、直近で売りが強かった。期間62の線なら直近62本の中で、期間200の線なら直近200本の中で、買いと売りのどちらが優勢かが分かります。
ローソク足と2本の線の並び
期間の違う線を2本入れたら、短期の線・長期の線・ローソク足の3つが、上からどの順に並んでいるかを見ます。見分けるときは、3つの真ん中に何があるかを見ます。
真ん中が短期の線:トレンド
上から、ローソク足・短期の線・長期の線。上昇トレンドの並びです。下降トレンドなら上下が入れ替わります。順張りにはうってつけの相場だとよく言われますが、私はこの並びを見て順張りに飛び乗るのはおすすめしません。線の期間によっては、並びがそろった時点で、トレンドはもう全盛期を迎えています。
真ん中がローソク足:転換しかけ
ローソク足が2本の線に挟まれているのは、トレンドが入れ替わろうとしている並びです。上に短期の線、下に長期の線があり、その間までローソク足が下がってきたなら、上昇から下降へ変わりかけています。2本の線は近づいていて、この先で交わる、つまりゴールデンクロスかデッドクロスが出る前ぶれになりやすい並びです。
真ん中が長期の線:もみ合い
長期の線が真ん中にあるのは、もみ合いの並びです。ローソク足と短期の線が、長期の線をはさんで上へ下へと行ったり来たりしています。長期の線にはたいてい傾きがなく、長い目で見ても方向がありません。私はレンジのトレードがあまり好きではないので、この並びでは見送ることの方が多いです。
並び方を丸ごと覚える必要はありません。真ん中が短期の線ならトレンド、ローソク足なら転換しかけ、長期の線ならもみ合い。上げの相場と下げの相場では、並びが上下さかさまになるだけです。
ゴールデンクロスとデッドクロス
短期の線が長期の線を下から上へ抜けるのがゴールデンクロス、上から下へ抜けるのがデッドクロスです。教科書の1ページ目に「買い時・売り時」として出てくる、王道中の王道です。ところが、そのまま売買の合図にするとダマシが多い。もみ合いやレンジでは、2本の線が絡み合い、ゴールデンクロスとデッドクロスが交互に何度も出ます。
クロスを使うなら、2本の期間をはっきり離してください。期間の近い2本は計算の結果に大きな差が出ず、ほとんど同じ所を通ります。視聴者の方の手法を添削したとき、EMA75とEMA100のクロスで売買していました。75と100は、どちらも中期の線です。私なら、EMA62とEMA200にします。
クロスは、売買の合図より、相場が変わったことの知らせとして役に立ちます。上昇トレンドの中でデッドクロスが出たら、少なくともトレンドは調整局面(トレンドがいったん休んで、戻したり横ばいになったりしている所)に入った、と分かります。2本が交わっただけでは、私はまだ転換とは見ません。デッドクロスの後に、高値の切り下げ(前の高値より低い所で、次の高値が止まること)が出たら、下降への転換と見ます。
関連記事移動平均線のゴールデンクロスとデットクロスでアラート&シグナル出現MT4インジケーターパーフェクトオーダー
短期・中期・長期の線の3本が、向きも並び順もそろった状態を、パーフェクトオーダーと呼びます。上昇トレンドなら、3本がそろって上を向き、上から短期・中期・長期の順に並びます。向きだけがそろった、並び順だけが合った、どちらもパーフェクトオーダーではありません。ここを勘違いしている人は、意外に多いです。
誰が見ても明らかなトレンドほど、終わりかけていることが多い。イメージで言えば、バブルがはじける直前です。
パーフェクトオーダーがそろったとき、チャートには、移動平均線を出さなくても誰でも分かるトレンドが出ています。指標がなくても分かるほどのトレンドは、力を使い果たして、伸びきる手前にいることが珍しくありません。そろってから順張りで乗ろうとしても、たいていは遅すぎます。
そろった瞬間を目で見つけるのも、意外と難しい。3本の線を同時に見て、向きと並び順まで確かめなければならず、チャートが動いている間は線も一緒に動きます。5分後、10分後になって気づくこともあり、その遅れで勝ち負けが分かれます。
パーフェクトオーダーは、入る合図より、上位足の状態を読む材料に向いています。上位足で3本がそろっていれば、大きな流れにはっきりしたトレンドが出ていることは確かです。同時に、そのトレンドが後ろ半分に入った印でもあります。
関連記事パーフェクトオーダーで矢印が出る順張りサインツール
関連記事ボリンジャーバンドの使い方|5つの形状パターンと実戦手法を完全解説移動平均線の乖離と乖離率
ローソク足が移動平均線からどれだけ離れているか。その離れ具合を乖離(かいり)と呼びます。ローソク足が線より大きく上にいるなら、直近で強い買いが入った。大きく下なら、強い売りが入った。線のすぐそばなら、今の値段はその期間の値動きの真ん中あたりです。
離れ具合を、移動平均線の値に対して何%離れているかで表したのが、乖離率です。
乖離率(%)=(終値−線の値)÷線の値×100
終値が150円、移動平均線が148円50銭なら、差は1円50銭。148円50銭で割って100を掛けると、約1%です。
乖離率には、上限も下限もありません。何%で行き過ぎかの決まりも、どこにもありません。乖離率は移動平均線から出すトレンド系の指標で、それでいてRSIやストキャスティクスのようなオシレーター(買われすぎ・売られすぎを測る指標)の性質も持っています。よく分からないオシレーターを足すくらいなら、乖離率を見たほうがはるかに役に立つ、と私は考えています。
トレンドとレンジで逆になる乖離の読み方
ローソク足が線から大きく上に離れていたとき、強いトレンドだから買うのか、離れすぎたから売るのか。どちらが合っているかは、今の相場がトレンドなのか、レンジなのかで決まります。
トレンドの中では、乖離が大きいほど、その向きの値動きが強い証拠です。上昇トレンドで押し目をつけても、ローソク足が短期の線まで下りてこず、線から大きく上に離れたままなら、値動きは明らかに強い。私はこういう押し目を、積極的に買いにいきます。
レンジの中では、逆になります。乖離が大きいほど、平均から外れた値として、線のほうへ引き戻される力が強く働きます。乖離を読む前に、長期の線がはっきり傾いているか、水平に近いかで、トレンドかレンジかを決めてください。
時間足で変わる乖離の逆張り
ローソク足が線から大きく離れた後、線まで戻るのが先か、さらに離れていくのが先か。約10年分のチャートで数えると、時間足によって答えが逆になりました。
1分足や5分足では、大きく離れるほど、線まで戻るほうが先になりやすい。
1時間足より長い足では、大きく離れるほど、戻る前にさらに離れていきやすい。長い足でローソク足が線から大きく離れていくのは、強い流れが出ている時です。乖離で逆張りをするなら短い時間足で使い、長い時間足で線から離れていく値動きには逆らいません。
もう1つ、乖離率に入っていないのが、時間です。同じ70pipsの上げでも、15分足4本、つまり1時間で上げたのと、40本、10時間かけて上げたのとでは、勢いがまるで違います。乖離率が大きいというだけで逆張りはせず、どれだけの速さでそこまで離れたのかまで見てから決めてください。
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「移動平均線の期間は、いくつがいちばんいいですか」。何度も聞かれてきた質問です。期間を聞くのは、フォークとスプーンのどちらがいいかを聞くのと変わりません。肉を食べるならフォークが便利ですが、フォークでスープは飲めません。何を食べるかで、答えが変わります。
移動平均線は、ある期間の平均の値段を見るための道具です。目の前の数本で、買いと売りのどちらが押しているかを知りたいのか。大きなトレンドの向きを知りたいのか。知りたいことが決まれば、入れる期間も決まります。チャートソフトに最初から入っているから期間20、切りがいいから期間100。多くの人は、この順番が逆になっています。
期間を短くした線は、値動きに素早く追いつき、短いトレンドをいち早くつかめます。その代わり、もみ合いで向きを何度も変え、ダマシが増えます。期間を長くした線は、もみ合いでもほとんど揺れず、大きなトレンドをとらえられます。その代わり、今の値動きへの反応が遅れます。1本の線で両方は取れません。
短期・中期・長期の3本を入れる
1本の線で何もかも見ようとせず、役目ごとに線を分けて、少なくとも3本入れてください。
| 線 | 見るもの |
|---|---|
| 短期の線 | 保ち合いやもみ合いの中で、買いと売りのどちらが押しているか |
| 中期の線 | トレンドの強さと、節目になりやすい所 |
| 長期の線 | 大きなトレンドの向き |
3本を入れるなら、期間を離してください。期間の近い線どうしは、計算の結果がほとんど同じになります。何本入れても、見える物は1本のときと変わりません。
EMA9・EMA62・EMA200・SMA666の4本
私がチャートに入れている移動平均線は、EMA9・EMA62・EMA200・SMA666の4本です。トレードを始めたばかりの会社員のころ、期間を1から1000まで、平均のとり方もSMA・EMA・SMMA・LWMAの4種類と、全部で4000通りを検証しました。その中から、実戦で使えると判断したのがこの4本です。
| 線 | 区分 | 見るもの |
|---|---|---|
| EMA9 | 短期 | 足1本ごとの、入るべき所 |
| EMA62 | 中期 | トレンドの中の浅い押し目 |
| EMA200 | 長期 | 深い押し目。トレンドの最終防衛ライン |
| SMA666 | 超長期 | 相場全体の大きな流れが変わる節目(4時間足で見る) |
EMA9は、ローソク足1本ごとの圧力を見る線で、スキャルピングのような短い攻防を読むのに向いています。トレンドが出ていない停滞の相場では、私はほかの線を見ず、EMA9だけを見ています。
EMA62で見るのは、トレンドの中の浅い押し目です。上昇トレンドが出て、いったん下げてきた所でEMA62に触れたら、押し目買いを考えます。押しがEMA62で止まらずに深く下げてきた時、トレンドが続くか終わるかの分かれ目になるのがEMA200です。EMA200を割った後にトレンドに戻ることもいくらでもありますが、そのときの相場は不安定で、それまでの規則性が崩れています。
SMA666は、4時間足で使います。15分足や1時間足でトレードしている時も、4時間足のSMA666を重ねて表示します。トレンドの中で割ったなら、長いトレンドが終わる知らせ。長いレンジの後に急に抜けたなら、大きなトレンドが始まる知らせです。
長い線から見る順番
移動平均線を入れたら、長い線から順に見ます。狙う向きは、長い線の向きで決まるからです。
| 順番 | 線 | 見ること |
|---|---|---|
| ① | SMA666 (4時間足) | 相場全体。線が傾いているか、水平か。値動きが線の所で止まってきたか |
| ② | EMA200 | トレンドが出ているなら、EMA200を割っていないか |
| ③ | EMA62 | 入る候補の場所 |
下降トレンドで、上げてくるたびにEMA200の所で止められているなら、規則性の安定した下降で、まだ続く見込みが高いと読みます。入るなら、次にEMA62まで戻ってきた所の売りです。EMA200で見た流れ(下降)には順張り、目の前の戻りには逆張り。順張りの逆張りです。
SMAとEMAの違い
MT4とMT5で選べる移動平均線は、単純移動平均線(SMA)・指数平滑移動平均線(EMA)・平滑移動平均線(SMMA)・加重移動平均線(LWMA)の4つです。よく使われるのはSMAとEMAで、こだわりがなければこの2つを知っていれば足ります。
SMAは、期間ぶんの終値を全部足して、期間で割ります。古い足も新しい足も、同じ重さです。EMAは、新しい足ほど重く見て平均します。値段がいつついたかまで計算に入れているのが、EMAです。
- SMA(期間10の場合)
(今の足の終値+1本前の終値+…+9本前の終値)÷10 - EMA
今の足のEMA=1本前のEMA+α×(今の足の終値−1本前のEMA)
α=2÷(期間+1)
今の足も平均に入っているので、今の足が確定するまで、線の右端は決まりません。移動平均線で何かを判断するときは、足が確定してから見てください。
SMAとEMAの違いは、値動きについていく速さです。レンジを抜けた時や、経済指標で急に動いた時、EMAのほうが早く値段に追いつきます。そのぶんEMAはローソク足の近くを通るので、ローソク足が線に触れる回数も多くなります。触れた後に反発するかどうかは、SMAでもEMAでもほとんど変わりません。
使い分けている人を見ると、日足や4時間足ではSMA、1時間足や15分足、それに期間の短い線ではEMA、という人が多いです。昔はSMAばかりが使われていましたが、今ではEMAを使う人が圧倒的に多くなりました。
移動平均線の手法の見分け方
移動平均線を使った手法は数えきれないほどありますが、大きく分ければ、クロスを見る方法、線への反発を狙う方法、線からの乖離を見る方法の3つに収まります。そこにもう1つ、移動平均線を合図には使わず、ほかの手法の場面を絞るのに使う方法が加わります。
| 手法の仲間(見ているところ) | 手法 |
|---|---|
| クロスを見る (線と線の位置関係) | ゴールデンクロス・デッドクロス・パーフェクトオーダーの順張り |
| 反発を狙う (ローソク足と線の位置関係・線の向き) | 押し目買い・戻り売り・MAカウンター手法(線にタッチした回数でトレンドの段階を読む) |
| 乖離を見る (乖離) | 乖離の逆張り |
| 場面を絞る (向き・角度・位置関係) | 長期の線が水平なら持たない・上位足の線・ほかの道具との組み合わせ |
新しい手法に出会ったら、向き・角度・位置関係・乖離のうち、どれを見ていて、どれを見ていないかを確かめてください。負けは、見ていない所から来ます。ゴールデンクロスが見ているのは、2本の線の位置関係だけです。乖離も、長期の線の向きも見ていません。だから、線とローソク足が絡み合うレンジで、クロスが何度も出て負けます。
移動平均線の無料MT4インジケーター
移動平均線のアラートやマルチタイムフレーム表示など、MT4で使える移動平均線のインジケーターは、7本まとめて紹介しています。
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移動平均線の使い方のまとめ
クロスやタッチを合図に入るのは、ここで終わりにしてください。
チャートに移動平均線を出したら、まず「この線は何本分か」を確かめ、向き・角度・位置関係・乖離を見て、今が使える相場か、無意味な相場かを言葉にする。入るのは、使える相場だけです。
向き・角度・位置関係・乖離を章ごとに分解し、線にタッチした回数でトレンドの段階を読むMAカウンター手法、手法ごとの使い方と負ける場面、期間とSMA・EMAを数字で決める方法まで、全11章の本「移動平均線解体全書」にまとめました。クロスやタッチの後の値動きを、時間足ごと・組み合わせごとに数えた表も載せています。
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